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弁護士の転職活動弁護士のキャリア

インハウスの転職市場(2022)

弁護士の転職活動

昨年もインハウスの転職市場の動向について投稿しましたが(昨年記事)、今年も、年明けに育休代わりの休暇を取っている間にエージェントとマーケットの状況をキャッチアップしました。具体的な転職の予定は全くありませんが、「エージェントと電話していた」というと、妻から怪しげな目で見られるのは日頃の行いのせいです。

基本的には昨年と似たような状況が続いていると思います。自分も徐々に転職希望者のボリュームゾーン(10年以下と勝手に認識)から外れつつある気はしますが、私くらいの年次(10-15年選手)に関するマーケットの状況については以下のような印象を受けました(本稿は、私くらいの年次をターゲットにした話を元に作成しており、若手の方々には必ずしも当てはまらないのでご注意ください)。

・相変わらず求人は多いが、コロナ禍の不透明さに加え、企業・法律事務所の好業績もあり敢えて動く人が少ない模様

・10-15年選手の需要も十分ある。業種にもよるが年収1,000万台後半~も珍しくない。

・この年次になると、インハウス経験者を好む会社も多い

相変わらず活況な求人状況

インハウス

インハウスの求人は昨年に続き好調のようです。JILAのメーリスにも流れていた人材紹介会社からのメールによれば、「IT関連、製薬・医療機器業界、Fintechをはじめとする金融関連、不動産関連業界」といった業界での募集が特に活況だったようですが、これは2020年と同じ傾向かと思います。個人的に不思議なのは製薬・医療業界ですね。他の業界は最近のビジネスが盛況だからインハウス増加の潮流と相まって求人が増えるのは分かるのですが、製薬・医療機器業界が最近特別に活況という訳ではない気がします(私が知らないだけかも知れませんが)。

個人情報保護分野

人材紹介会社からのメールで、個人情報関連の経験の需要の増加に触れられていたのは印象的でしたが、これは応募側にとっても求人側にとっても難しいポジションだと思います。おそらく同ポジションの業務としては個人情報保護に関する会社の体制づくりが求められ、かつ欧米の個人情報保護規制についても知識・経験が求められることになりそうですが、①今までペイする分野でなかったこともあり(今も日本に限って言えばそこまで?)、専門とする弁護士は非常に少ない、②体制づくりとなると、技術的なアドバイスが中心である法律事務所の弁護士とはかなり違う能力が求められる、③日本だけ見れば欧米より規制も制裁も緩い中、個人情報のスキルにどこまで報酬を払い、どれだけのリソースを個人情報関連の業務に注いでもらうべきか悩ましい、といった理由からです。

ちなみに、私の会社のアジア本部では個人情報管理を専門に扱う弁護士のポジションがあり、米国・ヨーロッパの個人情報担当の弁護士と連携しており、知財担当等と同じレベルで専門チームとして独立しています。

法律事務所

今は法律事務所への転職に興味が無いのでエージェントに詳しく聞いてもいませんが、印象としては法律事務所の求人も活況なように思います。一方で、法律事務所の業績は好調なように聞いているものの、巷に出てくるアソシエイトの求人の条件は昔から大して変わっていないような印象です(概して求人条件がざっくりなのも一因でしょうが)。年功序列ならぬ修習期序列主義が強く、生え抜きのアソシエイトより良い条件は出しづらいことから意外に硬直性が強いのでしょうか。好況かつ人手不足であれば、アメリカの様にアソシエイト全体の給料相場が上がらないのか疑問ですが、いずれにせよ、まずはパートナーにならないとお話にならない世界ということかと思います。

コロナ禍での転職控え

人材紹介会社からのメールでもエージェントとのキャッチアップでも触れられていたのが、コロナ禍に起因する転職控えです。いつまでリモートワークが続くのか分からないし、法律事務所や会社の業績も好調である以上、このタイミングで転職する理由があまり無いということです。リモートワークでワークライフバランスが改善したこともこの傾向に寄与していることが示唆されていました。確かに、法務はリモートワークと親和性の高い職種ですが、法律事務所での業務が楽になるというのは俄かには腑に落ちません。まあ、ドロップアウトするような人にはリモートワークだと楽ができる人が多いというお察しの面もあるのかも知れません。

個人的にも、現状に満足しているかはさておき、今の状況で転職するのは結構ためらいます。リモートワークにより働き方の柔軟性が増したのは事実ですが、それはリモートワーク以前に社内で人間関係を築いていたからリモートでも円滑にコミュニケーションが取れるのも大きな理由であって、知らない人しかいない状況でリモートワークからスタートする(気軽に直接聞ける人がいない)のは弁護士という陰キャにとってはハードル高いと思います。

10-15年選手の需要と年収レンジ

そろそろマネジメント職も意識されてくる年次ではあるものの、まだまだプレイヤー層としての10-15年選手の需要も十分ある感じです。年収については業種によるとしか言いようがありませんが、前述した活況な業界においては、年収1,000万台後半~の求人も珍しくない印象です。私くらいの年次になると、東京では1,500万、2,000万、2,500万あたりが意識される数字になってくるのかなと思います。逆に言えば、留学から帰ってきて5年以上たっており、多くは家庭も金のかかるライフステージに入っている経験弁護士を採用するにあたって、1,000万前半(大手の一年目のアソシエイトの水準)では簡単には行かないのではと思います。

英語要件については意識して確認していませんでしたが、まあこの年次・年収レンジになってくるとできて当たり前(最低限読み書き)かと思います。とはいえ、外資のように英語インタビューをする会社でもなければ英語能力を正確にチェックすることもできないと思うので、選考過程でハッタリかませば後は何とかなると思います(入ってから苦労するかは知りません)。

少し気になったのは、一昔前からインハウスの採用をずっと続けている総合商社の求人の条件は昔からあんまり変わってないなということです。シンプルに私よりもっと若い年次を求めているだけでしょうが、逆に言えば、上の年次が溜まりつつあることを意味してるのかなと思ったりします。商社に限らず、インハウスの数が多い会社は似た傾向があり、正直、10年越えの選手が行く場所では無くなりつつある気がします。

インハウス経験者の優位 – 問われるコミュ力

エージェントとの話で面白かったのは、私くらいの年次になると、年齢的な問題もあって組織・文化への順応力が懸念されるため、(特に比較的伝統的な日系企業において)インハウス経験者を好む会社が増えているということです。人材紹介会社のメールでも、「在宅勤務・リモートワーク中心となった事も大きな要因かと思われるが、人物面を今まで以上に重視する傾向が強くなった」という趣旨のことが述べられており、選考の過程でもコミュ力や順応性という社会人として当たり前のスキルが評価される傾向が出てきているようです。法クラの長年にわたる草の根活動(?)のおかげもあってか、弁護士は陰キャで組織になじまない者も多いということに世間も気が付き始めたようです

冗談さておき、企業がインハウス経験者を好むというのは良く分かります。正直な話、何年もカウンセル(あるいはずっとアソシエイト)という人達の中には、事務所内でなら問題はなくても、組織でやっていくには全然向いていない人が高確率でおり、私が採用担当であっても10-15年選手の法律事務所の弁護士を雇うとしたら慎重になると思います。

総括

2022年も2021年と似たような傾向が続くのではないでしょうか。売り手市場ではあるので、現状に不満さえあれば、よりよい環境に移るチャンスは比較的転がっている状況かと思います。

ただ、「人手不足だけど求人条件はあまり上がってない法律事務所」、「求人条件は徐々に上がっているけど、必須という訳でもないから慎重に見極めてる企業」、「安定志向なので、先行き不透明な現在はあまり動きたくないインハウス弁護士」、「年次的に生活水準下げにくく、今のところ事務所で何とかなってるからしがみついている事務所弁護士」という構図が原因で空振りしてる求人も割と多いのかなと。

p.s. 昨年も似たことを書きましたが、エージェントに聞けばより正確で詳細な情報が15分で聞けるので、こんな記事を読んでいる暇があったらビズリーチに登録してエージェントの話を聞いてください。

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