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法律時事

モテコンサルの情報開示請求と利益相反 – 弁護士に裏切られた?

法律時事

以前相談した弁護士から「身元を明かせ」と請求される謎

現代にはそんな需要があるのかと驚かされる「モテコンサル」なるサービスを展開している勝倉氏の代理人弁護士が、Twitter上のとあるツイートに対して発信者情報開示請求を行っており、これが許されることなのかとの情報が目に付きました。具体的には以下のツイートです。

リプ欄で既に語り尽くされている感はありますが、個人的には以下のように思います。

①法律や弁護士倫理上、形式的には問題なさそう
②自分であれば受任しない。例え秘密情報の流用などしてなくても疑われるのはどうしようも無い状況だから

形式的には問題なし – 過去に自分を頼ってきた依頼者を訴えていいの?

本件の何が問題なのかという点ですが、まず、弁護士職務基本規程は以下のように定めています。

二十ハ条 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。
(略)
二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手
方とする事件

(略)

例えば、過去にA氏を代理して「カネを返せ」と主張してB氏を訴えている時に、別のC氏から「A氏に名誉棄損されたからA氏を訴えて欲しい」と頼まれても、引き受けてはいけません。要は、「ある件でA氏の味方をしている間は、別の件でA氏の敵になってはいけない」というものです。したがって、清水弁護士が藤田華鳳氏の事件を「受任している」のであれば、モテコンサルからの依頼を受任できないことになりますが、既に藤田華鳳氏の過去の事件が終了していれば問題ありません。

このとおり、その時点で続いている依頼が無ければ、別件で過去の依頼者を訴えることは可能なわけです。もちろん、その場合であっても、過去の依頼の際に入手した秘密情報を使って過去の依頼者を訴えることはできません。職務基本規程では以下のように定められています。

(秘密の保持)
第二十三条 弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。
藤田華鳳氏は「昨年7月に相談したばかり」と述べているので、一応、昨年7月の案件は終了しているのでしょう。であれば、形式的には、「昨年7月の相談で入手した藤田華鳳氏の秘密情報を利用しないのであれば、モテコンサルのために藤田華鳳氏を訴えても問題ない」ということになるでしょう。

味方だと思ってた人に訴えられたらどう思う?

上記のとおり、清水弁護士の行為は「法的には問題ない」ということになりそうですが、人の心はそう簡単では無いですよね。「先生、その節はどうもありがとうございました!おかげ様で…」と思っている弁護士から訴状が届いたら、裏切られた気持ちになる人がいても不思議ではありません。「弁護士も仕事だから仕方ないよね」と理解してくれる激レア依頼者もいるかも知れません。それでも、「〇〇先生には前の件で色々とお話したからな、私の知られたくない秘密を相手にもバラシているかも知れない」と考えることは避けがたいと思います。弁護士への相談なんて全部他人には知られたくないようなトラブルばかりですよね。

そんなことあってはならないですが、例え、弁護士が「そんなことはしてない」と言い張っても、それを証明する術はありません。弁護士側にそれを証明する義務はありませんが、過去の依頼者が不信感を抱くのは人として自然なことだと思いますし、公正であるべき裁判においてこうした弁護士に対する疑念が生じるのは理想的ではないと思います。弁護士としても、当事者に不要な恨み疑念は抱かれたくないですし、「李下に冠を正さず」の姿勢で、第三者から疑われることはなるべく避けるのが通常だと思います。

したがって、私であれば受任しませんし、清水弁護士の受任に肯定的でない反応をしている人達も、基本的には同様の考えに基づいているのでしょう。

「身元晒せ」って訴えてきてるけど、お前知ってるよね?

ここまでは主に一般論として書いてきましたが、本件で清水弁護士が藤田華鳳氏に行っているのは、発信者情報開示請求という、名誉棄損等を理由にブログやツイッターの発信者の情報をプロバイダ等に問い合わせるという手続で、ネット上の権利侵害で投稿者等が分からないケースに対処する最初のステップです。

清水弁護士が「昨年7月」の別件の際に入手した藤田華鳳氏の情報を使えば、こんな手続を経ることなく直接裁判所に藤田華鳳氏に対する損害賠償訴訟を提起すればいいのですが、守秘義務の関係でその情報は利用できないからこそ、この手続を利用して改めて情報を入手する必要がある訳です。

清水弁護士から見れば、弁護士倫理に従って、過去の案件の際の秘密情報を使わずに、相手方を特定するための法的手続を実施しているに過ぎませんし、秘密情報の流用など当然していないと思います。しかし、藤田華鳳氏からすれば、「あなた私のこと知ってますよね。なのに『あなた誰』って法的な書類送られても、白々しいようにしか思えないのですが」と仮に感じたとしても、それは自然な感情だと思います。

特に本件では、裁判の事前段階の手続とはいえ、本件の問題は「藤田華鳳氏って誰?」という点であり、そこに過去の別件で藤田華鳳氏のことを知っている弁護士が知らないフリして関与したら、「なにこの茶番」と思われても仕方ないと思います。

依頼を断る難しさ

本件の弁護士はネット関連の法律問題をよく取り扱っており、私もこの方の著書を持っています。勝倉氏としては、個人としてもビジネスとしてもネット上での名声は重要なものなので、この分野に詳しい弁護士に依頼したいでしょうし、弁護士としても、助けを求めてきた人を「法的には可能なのに」断れるかというと、それも簡単な話では無いと思います。

発信者情報開示請求をしている背景事情(問題となるツイート等)を詳しく知らないので、本件について特に断定的な意見はありませんが、利益相反・弁護士倫理の問題は一歩間違えれば資格も失うし、難しい問題だなと思いました。

p.s. モテコンサルって…

「モテコンサル」ですか…草食系男子(もはや死語)の増加が叫ばれる昨今、画期的なアイデアですね。。誰だってモテたいでしょうし、「このモテコンサルのような人にモテたい」と思う人には魅力的に映るでしょうね。私は、「このモテコンサルのような人にモテたい」とは1ミリも思わなかったので、縁が無さそうです。

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