モテコンサルの情報開示請求と利益相反について

法律時事

現代にはそんな需要があるのかと驚かされる「モテコンサル」なるサービスを展開している勝倉氏の代理人弁護士が、Twitter上のとあるツイートに対して発信者情報開示請求を行っており、これが許されることなのかとの情報が目に着きました。具体的にはTwitter上の以下のツイートです。

リプ欄で既に語り尽くされている感はありますが、個人的には以下のように思います。

①これが、弁護士倫理上禁じられている利益相反行為や倫理上問題のある行為と断じることは難しいのではないか。

②自分であれば受任しない。なぜなら、例え秘密情報の流用など問題となる行為をしていないとしても、相手方が常識的な範囲で抱く疑念を客観的に晴らす方法は無く、自分としては、疑念すら持たれたくないから。

いったい本件の何が問題なのかという点ですが、まず、弁護士職務基本規程は以下のように定めています(これだけに焦点をあてるのも必ずしも十分でないのですが)。

(職務を行い得ない事件)
二十七条 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
(略)
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
(略)

もし、清水弁護士が「ツイ主の事件を受任している」ということであれば、これは、相手方(ツイ主)の同意がなければ受任してはいけないことになりますが、既に終了した事件であれば、これに該当しません。

平たく言えば、過去にA氏を代理して、B氏に対して貸金返還訴訟を遂行したけれども、裁判が終了した後、全く別のC氏を代理して、A氏を訴えるということは可能なわけです。もちろん、その場合であっても、A氏を代理していたときに入手した秘密情報を、C氏のために使うことはできません。職務基本規程では以下のように定められています。

(秘密の保持)
第二十三条 弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。

これについて、「秘密情報を使わなければ法的には問題ない」ということになっているとしても、人の心はそう簡単なものではないですよね。A氏としては、「私の味方だと思っていたのに、どうしてこんなことを」と思うかも知れませんし、それは仕事として仕方ないにしても、A氏が「あの弁護士は、私がB氏から貸金を取り返してお金があることを知っている。だからC氏をけしかけて裁判に持っていったのだ」と、過去にA氏から得た秘密情報を利用していると疑う可能性は完全に否定はできないです。

もちろん、そんなことはあってはなりませんが、例え、当該弁護士が「そんなことはしてない」と言い張っても、それを証明する術は通常ありません。証明する義務があるわけではありませんが、A氏が疑念を抱くことも人として不思議なことではないですし、法律に従って公正に争うべき場面で、こうした疑義が生じるのは必ずしも理想的なことではないと思います。

弁護士だって不必要に相手方から個人的な恨みは買いたくないですし、「李下に冠を正さず」の姿勢で、(法的に根拠があるかは別として)第三者から疑われるようなことはできるだけ避けるのが通常だと思います。

したがって、私であれば受任しないだろうと思いますし、受任について肯定的でないリプをしている人達も、基本的にはこうした考えに基づいているのでしょう。

 

一般論としては上記のとおりですが、本件の話に戻ると、清水弁護士が今行っているのは、発信者情報開示請求という、ブログやツイッターの発信者の情報を、名誉棄損等を理由にプロバイダ等に問い合わせるという手続で、ネット上の権利侵害で投稿者等が分からないケースに対処する最初のステップです。
(「モテコンサル側から郵便物が相手方に届いているのだから既に特定されているのでは」という反応が見られますが、これは、「こんな請求が来ているけどあなたの情報を開示していいか、ご意見は?」というプロバイダ等が送ってきたものであって、直接届いているわけではありません。)

以前の相談の際に入手した本件のツイートの発信者の個人情報を利用すれば、直接裁判所に損害賠償訴訟を提起すればいいのですが、それを利用してはいけないからこそ、この手続を利用して、(本件で得た情報のみに基づき)改めて情報を入手する必要がある訳です。

担当弁護士側から見れば、弁護士倫理に従って以前入手した個人情報を利用することはできないので、相手方特定のための正当な手順を踏んでいるに過ぎませんし、秘密情報の流用などということも当然ないと思います。しかし、相手方からすれば、「素性は分かっているし、前回の件を踏まえれば、相手方は、訴訟をしてでも止めておいたほうがいいと思う」といった話をしているかも知れない等と、疑心暗鬼にかられることもあるでしょう。

また、Twitterの匿名性が、名誉棄損などの他人に害をなす行為の隠れ蓑として機能することを良いと思うわけではありませんが、Twitterの匿名性に対する一定の期待は利用者の多くが持っているものであり、(裁判の前段階、かつ、相手方が誰か探す目的でしかない場面とはいえ)アカウントの特定が問題になっている場面で、既に自らの個人情報を持っている弁護士から法的な請求が届けば、相手方としては何か思うところがあってもやむを得ないことでしょう。

 

本件の弁護士は、ネット関連の法律問題をよく取り扱っているものと思われ、私もこの方の著書を持っています。勝倉氏としては、個人としてもビジネスとしても、ネット上での名声は重要なものなので、この分野に詳しい弁護士に依頼したいでしょうし、(私だったら受任しないとは言いましたが)必ずしも不可でないのに助けを求めてきた人をあっさり断れるかというと、それもまた簡単な話ではないのです。

発信者情報開示請求をしている背景事情(問題となるツイート等)を詳しくも知らないので、本件について特に断定的な意見はありませんが、利益相反・弁護士倫理の問題というのは、一歩間違えれば資格も失うし、やはり難しい問題だなと思いました。

 

p.s.

「モテコンサル」ですか。。草食系男子(もはや古いか)の増加が叫ばれる昨今、画期的なアイデアで、誰だってモテたいでしょうし、「このモテコンサルのような人にモテたい」と思う人には魅力的に映るでしょうが、私には縁がなさそうですね。

サービスのウェブサイト上で「250人以上」の事例をもって「ビッグデータ」と売りにしているあたりは、私の中でのビッグデータの意味合いからするとどうなのかなと思ったりはしますが。まあ、多くの事例に基づく客観的な分析ということでしょうし、世の中も、デジタルにしたりネットを利用するだけで、何でもAIだとかIoTだと主張する企業も多いですからね。

 なお、Wikipediaでいうビッグデータの定義は以下のようになっていますね。

 

 

 

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