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留学生活(NY)

[法曹向け記事]ニューヨーク州司法試験なんて受ける意味無い件

留学生活(NY)

今回は、NY Bar受けるくらいならスイカバー食っとけというネタ記事です。なお、私は、米国のLLMを卒業したのにNY Barを受験していないという変わったタイプであり、このエントリは、そういう事情を背景にしたポジトークだと思ってご笑覧ください。なお、本ブログ自体が法曹向けなのですが敢えてタイトルに書いたのは、皇室関係者と結婚した某K氏のNY州司法試験がニュースになると本記事のアクセスが急増するので、それと関連する内容を求めている人には意味の無い記事だと分かってもらうためです。

NY Barを受ける意味 – そんなものは無い

このエントリに辿りついた大手事務所の弁護士の方は、まず、「なぜ米国のLLMまで行ってNY Bar受けなかったの?」という疑問を持たれることでしょう。私の方こそ逆に聞きます、

「アメリカで弁護士業やるつもりも無い癖になんでNY Bar受けてんの?日本でも、弁護士業やるつもりない人は法学部卒業したって司法試験受けないでしょ。」

この問いに、「先輩達も受けてるから何となく」以上の回答を、説得力を持って提供できる人がいるでしょうか。一昔前は「箔が付く」みたいなこと言ってましたが、今では同じような人が増えすぎてその効果も疑問です。アジア圏以外の有資格のLLM生は普通に受験せずに帰ったりもします。四大や日本の大手法律事務所出身の人の合格体験記は巷にありふれていますが、その人達が「米国弁護士資格が人生でこんなに役に立った!」というのを記事にしているのは見たことがありません。もはや、手段の目的化の典型例のような気もします。

実際のところは、慣習ということで深く考えずに受験していて、自分を否定したくないからNY Barを受ける意義について真剣に議論しようとせず、「米国法の基礎を修めることができるから」とかそれらしい理由を付けながら、「NY州弁護士」という響きがカッコいいだけの肩書に酔い痴れているだけだと思います。

なのでハッキリ言います。「皇室の婚約者がいるけど、身元の怪しさが発覚して海外に高飛びしながら世間が認める国際弁護士という肩書を得る必要がある」という特殊ケースでない限り、NY Barを受験する必要はありません。その理由を詳しく書いていきます。

資格を持っていても米国法のアドバイスなんてしない

自分が米国弁護士の資格を持っていないのにこれを言うのは若干気が引けますが、司法試験受かっただけの新人弁護士が役に立たないように、NY州司法試験を受かっただけでは米国法のプロフェッショナルとして十分なサービスは提供できません。今は知らないですが弁護士賠償責任保険の関係でも正式な米国法のアドバイスなんてしませんし、それどころか、米国法について説明するときには「米国法の問題になるので、正式には米国弁護士にご相談ください」と米国法はやってないアピールすらします、名刺には「NY州弁護士ニキ」と書いてアピールポイントにする癖に。「NY Barの勉強により米国法に関する相当の知識を得た」などと強弁する人がいれば、それは、「背の立つところまでしか海に入っていないのに、俺は海を知ったと公言しているようなもの」です、ざわ…ざわ…

米国弁護士資格は日本の弁護士の業務の役に立たない

日本の弁護士として海外のクライアントや相手方とやりとりするとき、わざわざ米国の資格を持っていることを伝えたりしませんし、海外の当事者も意識していないと思います。誰も日本のローファームに米国法のスキルなんて期待していませんし、米国法のアドバイスが必要であれば、英語も十分に使いこなせない日本のローファームを使う必要は皆無で、米国のローファームを使います。例えばアジア案件で現地弁護士を使う時も、日本の資格やNY州の資格の有無なんて確認しませんよね。日本企業においても「この弁護士はNY州弁護士資格を持っているから米国法についてアドバイスを依頼しよう」と考える法務部の人間はいないでしょう(いたらその法務部のレベルを心配します)。「コモンローの基礎知識は海外案件でも役に立つ」という意見には私も同意しますが、LLMに通って米国ローファームで研修するくらいで十分で、NY Barを受けることが必須とは思えません。

また、話のタネとしてNY Barの話が役に立つかというと、国際案件に出てくるような米国のローヤーにとってはNY Barに受かるのは当たり前過ぎる話で、日本国内で大学受験の経験をわざわざ取引先と話題にするのと同じくらいの次元だと思います。通ったロースクールや米国で住んでいた町の経験は話のタネになると思いますが、トップファーム相手に「NY Barは大変だったよねー」みたいな話、恥ずかしくてできないんじゃないでしょうか。

こんな感じで、NY州の弁護士資格持っていても、海外の当事者にせいぜい「1へえ」貰えるくらいのものだと思います。

NY州司法試験を受けるメリット・デメリット

これまでNY州司法試験の受験について否定的な意見ばかり述べてきましたが、一応、受けるメリットと受けないデメリットを書いておきます。なお、日本の弁護士資格を持ってない人については対象外です。

受けるメリット – 自己満足

1. TwitterのBioに書ける。

これが最大の利点です。米国弁護士資格を持っているだけの日本のローヤーは、米国弁護士資格を持ってもそれらしいことは何もできない&しないくせに、ほぼ例外なくTwitterのBioに「NY州弁護士」と書いてドヤ顔してます。このように、米国弁護士資格があれば、「俺ハービー・スペクター」みたいな感じで自己陶酔できるとともに、モブ相手にSNS上でマウントすることができます。

2. 合コンで響きがいい

やっぱり、日本人に対する「ニューヨーク」のブランドバリューは絶大なものがあります。いや、資格取って帰ってきたらもう30超えたオッサンですけどね

3. NY支店(又は他の米国支店)に行ける。

マジメな話です。大手法律事務所の中にはNY事務所を開設しているところもあります。他の国の支店の弁護士が必ずしも現地資格を持っているわけではないように、専門的なことは現地の別の事務所を使うはずなので、米国弁護士の資格は必須ではないかも知れませんが、これだけ米国弁護士を有する人がいるなら、その中から選任しようという流れにはなると思います。このほかにも、何らかの理由で、どうしても米国で働きたい・現地の事務所に転職したいと思うケースがあるかも知れません。そうした場合には米国弁護士の資格が役に立つ(or 必須となる)ケースがあることは否定しません。

受けないデメリット – さみしい

1.NY州司法試験のあと、同級生と一緒にナイアガラの滝で記念撮影できない

(コロナ禍の今はさておき)大半の日本人受験生は、ナイアガラの滝に近いバッファローという町が試験会場であり、NY Barの受験後は、みんなでナイアガラ観光をするのが通例になっています。当然ながら私はこれに参加できず、同級生のチャットグループに試験を終えて解放感に満ち溢れたメッセージがナイアガラから送られてきて、寂しくなって滝のような涙を流したものです。あとは、同級生がみんなNY Barに向けて取り組む中、一足先に独り次のステップに進むのは、仲間外れみたいでなんか寂しいです。

2.SNSでの疎外感・劣等感は一生続く

上述のとおり、NY州弁護士資格を取得した人はTwitterでドヤ顔してますし、毎年、合格発表のときには、TLに「NY Bar合格しました!」と流れてきて、その後「登録のための宣誓に行ってきました!」という投稿が流れてきます(※追記:コロナ以降はオンラインでやってるっぽいです)。上述のとおり受ける意味が分からない試験にみんなが盛り上がっている中、自分は指を加えて見ているだけなので、SNSで知人の幸せなマウント投稿を見ている時に似た疎外感・劣等感を覚えることがあります。

冗談に聞こえるかも知れませんが、個人的にはデメリットはこれくらいだと真剣に思っています。現在は米国系の外資系企業に勤めていますが、採用の過程で米国の弁護士資格については特に聞かれませんでしたし、仮に米国の弁護士資格を重要視する企業に出くわしたとしたら、むしろ先方のニーズと自分のスキルセットのミスマッチを疑うべきだと思います

まとめ – 現実にはNY Barは受けるしかない

こんな感じで卑屈な意見を書き連ねてみましたが、実際のところ、周囲のプレッシャーやNY Barに代わる研修機会の不存在といった理由から、日本人にとって米国のLLMに行ってNY Barを受験しないという選択は事実上無いので、この記事の議論は何の意味もありません。ただ、SNSのTLで「NY Bar受かりました!」とか投稿してヤッハーしてる人を見るたびになぜだか少し悔しくなるので、NY Bar受けてない組としてこの記事を書いてみただけです。少し長くなったので、私がNY Barを受験しなかった背景については、別エントリに回そうと思います。

p.s. 

この記事がLL.M.INFOのNY Bar関連のページ(https://llm-info.com/nybar/)で「その他」として紹介されていて吹きました。ありがとうございます&ふざけた内容でスミマセン。

 

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