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法律時事

メルカリ等で発生しているPaidy詐欺について

法律時事

先週あたりから話題になっている、Paidy詐欺について考察してみました。

Paidyと今回の事件

Paidyのサービスは利用したことありませんが、事前申込も会員登録の必要もなく、メールアドレスと携帯番号さえあれば、ネットショッピング等で後払いができるというサービスのようです。

今回、メルカリを利用して行われた問題行為は、以下のようなものと認識しています。

① 詐欺師は、iPadといった、ある程度高額で、その時点では自分で持っていない商品をメルカリで出品(この際、詐欺師は、購入者の氏名・住所を入手できるように、匿名発送であるメルカリ便以外の発送方法で商品出品する。)。

② 購入者が、当該商品をメルカリで購入。商品発送のため、購入者の氏名・住所が詐欺師に伝わる。

③ 詐欺師は、購入を確認して、ビックカメラ、Amazon等のPaidy払いができる販売サイトで当該商品を購入。購入の際には、自分のメールアドレスと電話番号を使ってPaidyを利用し、②で入手した購入者の氏名・住所を購入者・送付先として入力。

④ ③で詐欺師が購入した商品が、ビックカメラ、アマゾン等の販売サイトから直接購入者に配達される。購入者は、メルカリで買った商品が届いたと思い、メルカリで購入完了手続をする。これによって、詐欺師のメルカリアカウントに売上が反映。

⑤ 詐欺師に代わって、ビックカメラ、Amazon等に代金を払ったPaidyは、 詐欺師にメール・SMSで督促を行う。詐欺師はこれを無視するため、③で入力された、購入者の住所に請求書を送付。

⑥ 購入者は、②で既に代金を払っているが、何らかの正式な請求と勘違いしてPaidyに払ってしまう。結果、二重払いに。

⑦ (おそらく詐欺師は、メルカリの売上金を引き出すには銀行口座登録や本人確認が必要なため、売上金でメルカリポイントを購入し、そのポイントを使ったID払いで、アマギフ等を購入して現金化している。結構、足がつきそうなものですが。。)

本件の分析

利用された各サービスの規約によっては異なる主張もあり得るかもしれませんが、Paidyの代金請求権はあくまで詐欺師に対するものであって、購入者は、二重払いする必要もないし、Paidyに支払った場合、Paidyに返金を請求できるはず、というのが率直な感想です。

上記①で、(メルカリの規約を踏まえた重箱の隅をつつく議論を無視すれば)詐欺師と購入者の間で売買契約が成立しており、方法はさておき、例え③④のような方法で商品を届けたとしても、詐欺師と購入者の間での取引は有効に行われたと考えられます。なお、Paidyの規約には、Paidyへの支払完了まで商品の権利はPaidyに留保されるとありますが、購入者はPaidyとは何の関係もありませんし、購入者に非がない以上は、購入者は、商品の権利を持ってない詐欺師からの購入でも、メルカリで代金を払って商品が届けば有効に権利を取得します(いわゆる即時取得)。

本件は、Paidyが、詐欺師に対して請求書を送るつもりだったのに、詐欺師にハメられて購入者に対して請求書を送ってしまっただけであり、購入者は、この請求書に応じて支払う義務もなければ、支払ったとしても、不当利得として返還を求めることができます。

感覚的にも、支払を負担するべき詐欺師の行方が分からずに問題が生じるリスクは、メールアドレスと携帯電話番号だけでPaidy利用者を追跡しているPaidyが負担するべきものであり、詐欺師がAmazon等でPaidyを使っているなど知る由もない購入者が責任を負うものではないでしょう(メルカリで買った商品が、Amazon等から直接届いた点に疑問を抱けというのは酷な気がします)。

一部では、購入者が実際に被害を被ったかのように受け止められている印象がありますが、経済的な被害者はPaidy(販売店との間の規約上、販売店にリスクを転嫁している可能性もありますが、信用問題として、実際に本件のリスクを押し付けるのは簡単ではないでしょう)になるのでしょう。もちろん、巻き込まれた購入者にも大きな迷惑ですが。

今後の期待

今回のニュースまでPaidyについて全く知りませんでしたが、非常に手軽な方法で後払いを可能にしている点で、消費者にも販売店にも有難いサービスなように見えます(私には全くニーズありません)。

メールとSMSで利用可能というのも、取りっぱぐれのリスクと債権回収コストを定量化して、経済的にうまくいくと踏んだうえで事業を展開しているのでしょうが、こんな特殊なケースまで想定していたかというと、どうでしょうかね。

単なる取りっぱぐれの問題であれば大きな問題ではないのでしょうが、サービスの利便性を重視した結果、犯罪者が収益をあげるために利用する可能性を作ってしまっていたということであれば、金融サービスの提供者としては信用問題になってくるでしょう。その観点からは、特殊なケースだからと言って許されるものではないので、ユーザーの利便性に配慮しつつも、まずは金融サービスとして信頼されるのに必要な安全性を最重要視して、サービスを改善していって欲しいものと思います。

 

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