マーケットの近況 – エージェントとは定期的にキャッチアップすべし
今の会社に転職するときにお世話になったエージェントと近況についてキャッチアップしました(なお、今の会社を紹介してくれたのは別のエージェント)。外資系のインハウスはいつクビになるか分からないのが宿命なので、信頼できるエージェントを捕まえておくのは大事だと思います。エージェントのほうも、潜在的な金脈ですし、普通は嫌な顔一つせずに対応してくれます。コロナ禍の始まった2020年からそんなに大きく変わってない印象ですが、マーケットの印象は概ね以下のような感じでした。
②国内ローファームの良い人がいれば取る傾向は継続
③外資ローファームの採用は沈静化
④国内のインハウス求人条件が、外資に負けないよう向上し始めている
⑤外資インハウスは好況な業界では相変わらずだが、飛びぬけたポストは見なくなった。金融とかで渋い条件も散見される。
⑥国内の求人で以前は敬遠されがちだった10年越えの弁護士とかの採用も一般化
⑦ジュニアパートナーやカウンセルの移動
⑧相変わらず、留学帰りくらいのニーズは強い
①全体的にそこそこ活況 – コロナ需要は盛況だが持続性は見極める必要
巣ごもり用のエンタメやIT業界など、コロナ禍で盛り上がっている業界の採用は昨年から相変わらず活況の模様です。あとは、コロナよりも前からのトレンドですが、物流関係(倉庫等のロジ物件を扱うREITやファンド関連の会社を意図しています)なども堅調だと聞いています。
なお、好況を背景にした求人ポジションは条件も良く、定期的な昇給はあまり期待できず転職により給与を上げていくタイプの高給インハウスには魅力的ですが、求人の時点がピークの可能性もあるし、不況になればポジションの存在意義から見直しされる可能性があることには気を付けるべきだと思っています。
②国内ローファームは相変わらず – 良い人がいれば前向きに採用
国内ローファームは去年もそこまでコロナ禍の影響を受けている気配がありませんでしたが、今年も同様で、人材がいれば前向きに採用したいという傾向がある印象を受けました。突然不景気になっても当面はトラブルや後始末などの作業が発生するので、法律事務所には遅れて景気の影響が訪れる傾向があり、リーマンショックの時も一番ヤバかったのは2010年ころだったと思います。しかしながら、信用不安により経済全体が縮小したリーマンショックの時と違って、今回のコロナは、航空・観光などダメな業界がとことんダメになる一方で、信用不安は起きておらず全体的には回り続けており、むしろ金融緩和による余りガネが行き場を探していること、コロナのおかげで大きな恩恵を受ける業界もあることなどから、どんな奴の味方でもするローファームにはリーマンショックの時ほどの影響は無いのかも知れません。
③外資ローファームは沈静化
去年の時点で既に大幅にサイズダウンしてるような感じでしたが、外資ローファームは相変わらずションボリしているようです。流石に国際的な案件は、物理的な制約も多ければ大規模な案件も多く、停止せざるを得ないものが多いのでしょう。個人的には、多少時間はかかるかも知れませんが、コロナさえ終わればリーマンショックの時より速いペースで復調する気もします。
④国内インハウス求人の条件面が向上
そもそも国内インハウスのニーズは、景気というよりはインハウスの一般化に伴って増大していた部分も大きく、国内インハウスの求人は比較的堅調なまま推移していると思われます。また、私の所に入ってくる求人情報を見ていると、直近の傾向として、国内のインハウス求人の条件が向上し始めている印象があります。
国内企業の求人はこれまで、留学帰りの四大アソシエイトの目線からは報酬的に厳しいものが多かったし、年俸1,000万円切るなんて話にならないという感じでしたが、インハウスの地位が向上してきたのか、両者の目線が近づいているように思います。
外資のインハウスと張り合うレベルの好待遇にまでなっているかというと、流石にそんな求人は限定的ですが、インハウスの立場としては、この流れが強まっていけば有難い限りです。
⑤外資インハウス – 強い業界は堅調だが超好待遇案件は減少
IT、製薬、ロジ等、数年前から既に好調だった業界では相変わらず堅調な様子です。もともと外資は、好景気のときの増員か退職者が出た時のリプレイスメントが主なので、継続的に求人のある会社のほうが珍しいですけどね。だからこそ、新たなポジションをいち早くキャッチすべくエージェントとの交流を維持するのが大事な訳です。
国内のインハウスは求人条件が良くなっていると言いましたが、外資は特にそうした印象はなく、むしろ、昔は存在した3000万-5000万という様な飛び抜けたポストがあまり見られなくなったようです。個人的にも、金融業界なんかで「これ外資か?」と思うくらいの渋めの案件が散見されるようになったと感じています。
⑥10年越えの弁護士の採用が一般化 – 昔は敷居が高かった
少し前までは、10年以上の弁護士といえば法律事務所でいうパートナークラスなので、採用にあたり敬遠される傾向もあったようですが、そうした傾向は薄れているとのこと。最近は、10年以上経ってもアソシエイト・カウンセルというのも珍しく無いですし、そういった弁護士を採用するのに抵抗が小さくなったようです。日本企業は年齢を重視しますが、40過ぎくらい迄なら何の問題もなくピラミッドにフィットします。日本企業も、だんだんインハウス弁護士を使いこなせるようになり、採用する目も養われてきたのでしょう。
⑦ジュニアパートナーやカウンセルの移動
これはオマケ話ですが、最近は、法曹増員による大量採用世代がパートナー適齢期に達したこともあり、とりあえずパートナーに上げるという事例も増えています(ベジータに言わせれば、パートナーのバーゲンセールです)。こうしてパートナーになったは良いものの、自分で客が取ってこれる訳でもなく労力に対してペイしていないと感じたジュニアパートナーが転身を考えるケースも無い訳ではないとのことです。現在はまだレアケースだと思いますが、今後もこのパートナー増員の傾向が続いた場合、どのようになるのかは興味深いところです。
また、上述した事務所の大型化を背景に、法律事務所におけるカウンセルとかいう謎のポジションも増加の一途を辿っています。教授、検察官、裁判官、行政庁出身者等、まさにカウンセル(顧問)という方々もいますが、「パートナーでもアソシエイトでもない何か」であるカウンセルの割合が激増している印象です。語弊を恐れずに言えば、単にパートナーになれないシニアアソなのですが(なお、いったんカウンセルになってその後にパートナーになるケースも一般的になっていますので誤解無きよう)、カウンセルに定着しているタイプは現状に安住する傾向があり、移動するケースはそこまで多くないようです。ただ、パートナーと同じく、大量採用世代がぞろぞろとカウンセルになり始めた頃ですので、そういう人達が今後どのように動いていくのかはまだ分からないですね。
⑧留学帰りの強いニーズ
十分な実務経験もあり英語でのコミュニケーションも取れる、そんな留学帰りの弁護士のニーズは相変わらず強いようです。一方で、法律事務所としても、お金を出してまで留学に行かせた弁護士を逃すのは痛手なので、先ほどのパートナー・カウンセルへの大量昇格もその一環でしょうが、どうしたら人材を引き止められるのか色々と考えています。
個人的には、そろそろ「留学後〇年以内に退職したら留学援助は返済」とすれば良いと思っています。そうすると、公平性の関係でダメアソへの片道切符が出せなくなるんですかね。歩合の比率を上げれば勝手に辞めていく気もしますが。
話が脱線しました。とにかく、転職市場における留学のアドバンテージは相変わらず大きいので、国内の経験だけでやっていく明確なキャリアプランを持ってない限りは、留学に行かないという選択は無いと思います。「英語嫌い、海外嫌い」とかいう人は好きにしてください。なお、人にもよりますが、帰国後は留学前に想像していたより英語を使う機会が少なく、あっという間にドメドメに退化してしまいます。そうなると、英語を使う職業への転職に怖気づいてしまう可能性も出てくることは、心のどこかに留めておいてもいいでしょう。
p.s. ここまで読むならエージェントに聞け
色々と述べましたが、こんな情報は、ビズリーチに登録するなりしてエージェントと会話すれば10分で手に入る情報です。ここまで読んで頂いておいて申し訳ないのですが、この記事の内容に興味を持つくらいなら、一度転職エージェントと話してみることをおススメします。
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