実務修習②

法曹養成

修習地の選択についてやや語り過ぎましたが、実際の実務修習の内容に入っていきます。

今では、期間も短くなってさらには選択修習なる特別プログラムみたいなものもあって若干様相が違うようですが、私のときは、4チームに分かれて、民裁修習、刑裁修習、検察修習、弁護修習の4つを3か月ずつでローテーションしていくというものでした。

どれも貴重な経験ですが、私にとってはざっくりこんな感じでした。

  ① 弁護修習は天国。ただし、当たり外れが激し過ぎる
  ② 検察修習は、こんな世界もあるのかという社会勉強
  ③ 裁判修習(民事・刑事)は公務員

①弁護修習は天国。ただし、当たり外れが激し過ぎる。

弁護修習でやることは、裁判所へ提出する準備書面その他の書類を準備したり、依頼者との打ち合わせや接見、裁判に同行したり、弁護士会の委員会に出席したり、夜の繁華街に出かけたりと、色々です。

検察庁や裁判所にこもっている時間の多い他の修習に比べれば、各種の委員会に出かけたり、夜の街に出かけたりと、外に出る機会も多く、他の弁護士との交流も広まります。最初にここからスタートできると、残りの修習生活がスムーズに進みますね。

指導する弁護士も基本自営業者で自由人なので、自分のやり方を押し付けたりはせず、「人それぞれのやり方があるけど、まあここでは私のやり方をみていってよ。バリバリやるのは、弁護士になってからでいい」と大らかな感じで指導してくれるケースが多いと思います。

また、ある程度組織として動いている裁判所や検察庁と違って、弁護士は個人事業主であり、人によって千差万別ですので、どこの法律事務所に割り当てられるかによって当たり外れが激しいですね。昼も夜も面倒見のいい弁護士もいれば、自由奔放ですごいざっくりな感じで対応する弁護士もいれば、とにかく熱い人権派の弁護士もいます。

なお、大手法律事務所も(少なくとも私が在籍していた事務所は)修習生を受け入れていますが、正直、あたりクジとは言い難いですね。できる限りのサポート(美味しいもの食べさせたり?)はしていると思いますが、いかんせん、扱う事件の性質が特殊過ぎて、修習生に与える適切な案件が少なく、いい経験をさせてあげられているかは疑問がありますね(とはいえ、在籍している弁護士の多様性には事欠きませんし、実践的ではないにせよ、ユニークな体験はできているかもしれません。)。

②検察修習は、こんな世界もあるのかくらいの社会勉強

検察修習の内容は、守秘義務の問題もあるし、かつ一般論で語るのも簡単ではないのですが、まあ、被疑者の取調・勾留請求・起訴・公判といった一連の刑事手続をお勉強させてもらうというものです(何の説明にもなってない…)。たまに外部での研修があるのですが、まさに現場最前線といった感じのもので、結構衝撃的なものもありました。

検察は他の法曹三者(弁護士、裁判所)と比べて圧倒的に縦社会で体育会系です。臆せず取り調べできる胆力や、被疑者を口説き落とす人間力みたいなものも必要ではありますが、上席とうまくやっていける処世術とか根性みたいなものが必要と思います。

研修所に入ったころは、公益の代表者として、適正な法律の適用・処罰の実行を実現する正義の味方的なところにやり甲斐があるのではと思っていましたし、自分も体育会系なので、研修所の教官や検事正(地方の検察庁で一番偉い人)の「ガハハ、俺の若いころはな」みたいな感じも嫌いではありませんでした。

ただ、実際の職務の内容は非常に泥臭く、何を考えているか分からない犯罪者と向き合い続けるずーっと地味で全うな道であり、被疑者・被告人の心情を理解する、あるいは理解できないままに付き合い続けられる自信が湧かなかったため、検察官の道はさくっと切りました。

私の同期からは、人間のドロドロとした面に関わっていきたいという優秀な変人と、若干メルヘンで真っすぐな人が任官されました。なお、裁判官希望者ほどでなくてもいいですが、それなりの成績は求められていた印象です。

当然ですがキムタクみたいな検察官はいませんし、残念ながら松たか子みたいな事務官もいません。でも、みんないい人達です。

③裁判修習(民事・刑事)は公務員

裁判修習は、民事裁判を扱う民裁修習と刑事裁判を扱う刑裁修習が3か月ずつあります。修習の内容は、基本的には裁判記録との闘いですね。裁判の傍聴も当然しますが、日本の裁判はほとんど書面主義で、証人尋問も、事件を左右するようなものは中々ありませんし、法廷ドラマのような、突然の新証拠を突き付けての急展開もありませんので、刺激的な場面は少ないかもしれません(今は裁判員裁判があるので、それに関する修習は若干特殊になっているかもしれませんが、私のときは導入前だったので、そういったこともありませんでした。)

記録を地道に読みこんで、判決等を起案して(もちろん、実際に使われるようなシロモノではありません)、サクッと定時に帰るザ・公務員的な暮らしです。一番お勉強にはなるかも知れません。弁護士・検察官と違い、当事者ではなく、当事者が準備したものを捌くポジションなので、事件の裏側までは見えず、物足りなさを感じることもあります(予想していたとおりで、これが理由で裁判官になる気は初めからありませんでした。)。一方、双方当事者が反対のことを言い合う中で、一つの結論を出さなければならず、それが当事者の勝敗・時には人生を左右するというプレッシャーは非常に重いものだと感じました(まあ、法曹はみんなメンタルお化けでないとやっていけませんが)。

なお、裁判官は、基本的には修習生の中でも優秀な人間がなるので、個人差はあれど裁判官の脳みそは非常に優秀です。そんな宇宙人が課題を出してくるので、「これくらいできるよね」って感じでムリゲーを要求してきます。それでいて、別に我々の脳みそに期待もしていないので、成果物の出来が悪くても、「まあこんなもんだよね」って感じです。講評は非常に論理的にしてもらえます。ポジション的に、頭脳明晰・沈着冷静な人が多いですね。裁判官希望の人は、修習で成績トップクラスであることを求められるので、必死に勉強しており、自然と同級生の尊敬を集めることになります。私のクラスからは、司法試験現役合格・東大法卒の修行僧が任官しました。

ざっくりと実務修習を振り返ってみましたが、なんだかんだ、大切なのは同期との思い出づくりでした。前期修習は打ち解け始めるころには終わってしまいますし、後期修習は二回試験を控えて若干緊張感も出てきますし、実務修習の間が一番深く接しあうことになります。修習同期との絆は、一生ものの関係になります(弁護士になって10年程度しかたっていませんが、)。私自身は、実務修習中は、時には同期のおっさん達に可愛がられながら、時には同い年の同期と語りあいながら、非常に有意義な時を過ごさせて頂きました。実務修習は、司法修習の最も重要なパートなだけに、短くなってしまったのは残念に思います。

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