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東京マラソンの一般参加中止と返金規定について

法律時事

コロナウイルスの影響で、一般参賀や東京マラソンの一般参加まで中止になってしまいましたね。。まあ、私は皇室ウォッチャーでも市民ランナーでもありませんし、立場関係なく、中止の判断自体は妥当だと思っています。

とはいえ、何かを中止にするときは中止に伴う問題も色々発生してくるわけで、東京マラソンについても、参加費の返還について話題にしている人も多いです(返金なしについて素直に受け入れている人も多いあたり、マラソンランナーの忍耐強さを感じます。。)。

外野からは、「状況が状況だし、今回はやむを得ないし波風立てるべきではないかな」という思考に至るのも納得できますが、一応検討だけはしておこうと思います(注:100%明白というケースでもありませんので、決して鵜呑みにしないでください)。先に結論だけいうと、「参加料返金しないという対応は、法的には疑問もアリ」と思っています。

募集要項・エントリー規約の内容

東京マラソンのウェブサイト上の募集要項(https://www.marathon.tokyo/participants/guideline/)では、返金について以下のように規定されています。

エントリー規約に定める理由による大会中止の場合を除き、参加料の返金は行いません。(同要綱「その他」1

さらに、同ページ下部のエントリー規約において、参加料が返金される場合が定められています。

積雪、大雨による増水、強風による建物等の損壊の発生、落雷や竜巻、コース周辺の建物から火災発生等によりコースが通行不能になった結果の中止の場合、関係当局より中止要請を受けた場合、日本国内における地震による中止の場合、Jアラート発令による中止の場合(戦争・テロを除く)は、参加料のみ返金いたします。なお、それ以外の大会中止の場合、返金はいたしません。(同規約第13項) 

表面的にこれらの規約だけ読めば、①大会が中止となった場合で、②中止の理由が、返金事由に該当するものである場合には、参加料が返金されるということになりそうです。

要件の検討

① 大会中止

「一般参加が中止になっただけで、エリートランナーだけで大会は開催されるんですよね、これって、「大会中止」になるんですか?」

「エリートランナーだけ走らせれば大会は開催したことになるに決まってるではないか。「大会中止」と書いてある以上、一部でも開催すれば市民ランナーに返す金はないわ。」

…納得いきますでしょうか。これだと、コロナウイルスに関係なく主催者である東京マラソン財団の一存でプロだけの参加にしたり、ジュニア部門の開催をやめたり、女子だけの大会にしたりした場合でも、参加を制限されたグループは返金を受けられないことになってしまいます(なお、国や地公体、こうした一般財団法人との関係でも契約に該当するものには消費者契約法は適用されるため、かかる一方的な解釈には消費者契約法上の問題も…)。

また、(チャリティ枠はともかく)東京マラソンの開催にスポンサー的に協力するために参加料を払っているわけではなく、あくまで出走に関連して参加料を払っていると考えるのが自然ですし、合理的に読めば、これだけの規模で参加(出走)を制限されれば、大会の構造上、出走を制限されたグループとの関係では「大会中止」に該当すると考えるのが合理的だと思います。

② 中止理由の返金事由該当性

上で引用したエントリー規約には、コロナウイルスについては記載しておらず(記載するとすれば「疫病」とか)、該当する可能性があるのは「関係当局より中止要請を受けた場合」くらいだと思われます。

「きっと国や東京都から財団に対して今回の一般参加はやめておこうとお達しがあったんですよね。だったら返金理由にあたるんじゃないですか」

「面白いことをおっしゃいますね。国や東京都の要請などありませんよ。誰の指図も受けずに自発的に決定した以上、市民ランナーに返す金はありません。そもそも、さっきも言ったとおり大会は中止されておりません。」

…どうでしょうか。

主催者としては、このように「当局からの要請はなく、自ら決定したので返金事由に該当しない」というかもしれません。実際、関係当局からの要請が無かったといわれると眉唾ものですが、それ以前に、関係当局からの要請というやむなき事情がある場合には返金するのに、自ら進んで決定した場合には返金しないっていうのも奇妙な話ですよね。

加えて、天災地変による通行不能やJアラート発令といった、主催者に責任が無いよねと思われる場合に返金をすることになっているのに、それ以外の場合(主催者に責任がある場合含む)には返金しないという構造になっているのも、バランス感がよく分かりません。

また、クローズアップしても仕方ない点かもしれませんが、戦争・テロの場合だけ特に返金しないのもイマイチピンときません。大地震もテロも、不可抗力という点では変わりがない気がします…(なお、「コロナウイルスはテロだ」という主張はさすがにないでしょう。。)。

本来であれば、「天候とか、天災地変、地震、戦争・テロ等の不可抗力による中止の場合は返金しません」という一般的な規定を入れておき、必要に応じて善意で返金すべきか考えればよかった気がしますが、中途半端に不可抗力による中止でも返金する仕組みになっているため突っ込みどころが生じているように思います。後出しジャンケンですが、少なくとも私ならこうは作りません。

なんとも不思議な規定なのでクリアな解釈は難しいですが、コロナウイルスと、本規定で返金事由として列挙されている他の不可抗力事由を区別する合理性がないように思われ、「この規定はあくまで例示で、天災地変でも返金するなら同様の不可抗力でも返金するべき」という主張も一定の説得力を持つように思います。ちなみに、今回のコロナウイルス流行は本件では不可抗力と認定していいと思っています。

(2/19追記:結局のところ、保険の支払事由に合わせて規約を作ったということで、保険金が出るなら払うよーということにしたかったのかも知れませんね。戦争・テロについては保険料が上がるから対象外にしたのか。ただ、保険というのは裏の事情ですからね…)

なお、小難しくなるので詳細は避けますが、仮に、この規約が無いとか無効だったりとかした場合どうなのかというと、民法的には、不可抗力で契約が履行できなくなった場合、危険負担の債務者主義といって、対価(ここでは参加料)を徴収する権利がなくなると思われます。

 

「結局参加料はかえってくるのか」という本質的な問いにはあまりはっきり答えていませんが、規約を見た個人的感覚としては、返金しないという対応が必ずしも法的に正しいとは思えないという感じです。今では”enjin”等という集団向けプラットフォームもありますから、不満に思う人が動こうと思えば動けない訳ではないかもしれません。

法律・規約どうこうでなく返金なしは当然?

SNSやウェブサイト等では、準備に多額の費用(税金)もかかっているし、この手のマラソン大会では中止の場合の返金無しは当然、という声も見受けられます。

準備費用が掛かっているというのはその通りだと思いますし、私はよく知りませんが、通常のマラソン大会がそのような仕組みになっていることも自然なこととして理解できます。

ただ、東京マラソンは、主催者の持ち出しもありそうなそこらのマラソン大会と違って、スポンサー収入を主な財源とする商業的な色彩を帯びたビッグイベントになっているものと認識しています。

そうすると、出走すらできなくなった一般参加者から安くはない参加料を徴収するのが本当に理想的な形なのかについては疑問に思います。東京の交通を大規模に制限する公共的なイベントを利用して利益目的で広告効果を狙うスポンサー達だけにリスクを押し付けてくれていいような気もします(スポンサーとの取り決めがどうなっているかは分かりませんが)。

 

そうした意見を述べるにあたって一応、東京マラソンの収益・費用について東京マラソン財団のデータを見ておきます。

(出展:一般財団法人東京マラソン財団 経営改革プラン改訂版(2019年度))

 

収益約36億円―費用約32億円=利益約4億円と、意外と儲かってないんですね(まあ、儲かりすぎてもいけないのか…広報費といった広告会社等への業務委託費の大きさは目立ちますが。。)。

加えて、上記の資料から読み取れる収益の内訳が以下の通りです。

スポンサー料:24億5346万2千円
その他自己収益(主にEXPOブース販売&参加料):9億7865万7千円
都分担金:2億1000万円

ここで、海外参加者に比べて安価な国内参加者の参加料16,200円を前提に、エリートランナー100人を抜いた37400人分の一般参加の参加料を計算するという雑なことをしてみると、

16,200×37400=6億588万円

となります。そうすると、2018年の利益分を超えているわけで、何もかもキャンセル不可で去年と同じだけの収益・費用が生じるという乱暴な仮定に立つと、参加料返金すると仮にスポンサー料等が入っても赤字になってしまいますね…

ただ、参加料は去年から5400円値上がりしているそうなので、2018年と同じ前提なら、参加料抜いてもほぼトントンという感じになりそうです。外部委託先やスポンサーとの交渉をうまくやって、一般参加者への負担は最小限にというのもなかなか難しいですかね(返金手続・費用もそれなりにかかるでしょうし)。

※2/22追記 東京都が大会運営に要する費用として、一人あたり約5万4800円かかると言って、以下の資料を出してきました。

うーん、確かに19.7億円もかかっているのか…って、スポンサーの協賛金が27.5億円もあるなら参加料なくても大丈夫じゃねこれ?ランナーサービスに関わる費用ってなんのことか分からないですが、敢えて「大会運営に要する費用」に含めてないってことは、一般参加中止にしたらかからない費用ってことなのでしょうか…。規約のこともそうですが、言ってることと規約・資料が完全に合致してないのが残念感を増幅させてしまいます。

損得議論する状況ではないかも知れませんが、結果として、広報委託等で多額の報酬を受け取る広告会社等の企業さん達が、(中途解約や報酬の支払拒絶ができない限り)経済的には一番得をするということになるのでしょうか。
今年はわかりませんが、財団のウェブサイトでは2019年大会の発注先の一部はこうなっています(http://www.tokyo42195.org/common/pdf/190831_2018_keiyaku.pdf)。

まあ、ランナーもランナーでお祭り化に乗っかっているところありますし(走りたいだけならここでなくていい訳ですから)、絶対にノーリスクであるべきとも思いません。都民でありマラソンに興味もない私としては、なるべく都に負担の生じない形が論理的には好ましい訳ですし。

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