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インハウスのキャリア

You’re fired! 外資インハウスはクビになりやすい?

インハウスのキャリア

しばらく更新が途絶えて突然こんな記事を投稿したのは、会社をクビになったからではありません、このブログの平常運転です。

やはり外資といえば、「比較的給料はいいけど、クビにもなりやすい」という印象があるのではないでしょうか。私自身もそのようなイメージを持っていましたし、今でもそのイメージ(というか、突然解雇されるかも知れないという恐怖)を完全には払拭できていません。今回は、比較的日本でのビジネスが好調なタイミングで今の会社に入社し、コロナによる大打撃を受けながらも何とか3年以上勤続してきた身として、外資系インハウスにおける解雇リスクについて触れてみたいと思います。もちろん、外資系と一口にいっても様々でしょうがが、ざっくりいうと、以下の様な感じだと思います。

・国内企業に比べると圧倒的に解雇されやすい(比較の問題)
・とはいえ、そう簡単には解雇されない(特にインハウス)
・拠点縮小等のリスクは避けられない

国内企業に比べると圧倒的に解雇されやすい

これは事実だと思います。というか、国内企業に解雇という概念が無さすぎるんですよね。この国内企業の圧倒的終身雇用慣行と比べてしまうと、外資系における解雇のリスクは相対的には高いと言わざるを得ません。

なお、労働法は専門分野ではありませんが、法的には、外資系のような雇用慣行を理由として解雇の有効性が認められやすくなる訳では必ずしもないと思います。インハウスの事例ではありませんが、最近、バークレイズのMDが解雇の有効性を争った事案で、会社側が敗訴した事例が記憶に新しいです(https://www.47news.jp/7461818.html)。

「法的に解雇が認められやすいわけではないのなら、整理解雇なんて滅多なことでは認められないし、理論的には国内企業も外資系企業も解雇のリスクは大きく変わらないのでは?」と思う方もいるかも知れません。純粋に法的に見ればそうかも知れません。

しかしながら、解雇の通告を受け会社から締め出されてしまえば、現実的には次の仕事を探さざるを得ませんし、通常は、解雇を通告した会社に戻りたい(戻って元通りに働ける)と思うことはなかなか無いと思います(問題が無ければ次の職も見つかるので…)。したがって、法的な解雇の有効性はさておき、解雇のアクションを取られるかどうか現実には非常に大きな問題な訳であって、その点、外資系企業は、比較的容易に解雇のプロセスに踏み切ることが多いと思います。

簡単には解雇されない

外資系では相対的に解雇されやすいとはいっても、実際に“You’re fired!”を体験できる機会はそうそう無いと思います。

外資系ではパフォーマンスが悪いとクビになるとはいっても、法務部門は、売上などの数値ノルマが課されやすいフロントの部署とは違って、パフォーマンスの定量的な評価がしづらいところがあります。また、業務の性質・専門性が故に他部署からも面と向かってケチをつけづらいですし、潤沢に予算を確保できる部署ではないとはいえ、今ある人員をカットしろ(法務・コンプライアンスを弱めてもいい)と言われることも少ない部署と思われます。

そう考えると、上司と全くそりが合わないとか、よほど無能でなければ、簡単に解雇されるということは無いと思います。

外資系インハウスの解雇の有効性が争われたケース

外資系のインハウスの解雇に関して、パタゴニア・インターナショナル・インク事件(東京地判令2年6月10日)という比較的最近の判決があります。たまにネットで見る情報からすると、同社は特殊な社風を持つ会社に見えますし、どのような採用・解雇ポリシーを持っているのかは不明ですが、以下のような事情(一部)があって解雇されてしまったようです。

①外部カウンセルの見解を自分の見解に沿うように捻じ曲げて報告
②レポートラインに関する業務命令を無視して日本支社長を上司とすることを拒否
③在宅勤務制度が無いのに頻繁に出社しない

うーむ…

これは事案の一部ではありますが、①については、裁判所に「その自己の見解の法的根拠は不明であり、その正確性自体も疑問」という趣旨のことまで言われているようで(個人的にも、見たことも聞いたこともない理論でした)、シンプルに日本法の専門家としての見識が疑われますし、②と③については社会人として理解ができません。裁判まで行くのはこれくらいエクストリームなケースなのだということかも知れませんが、正直、解雇が有効となるラインを画定するうえでは参考になりませんね。詳細に調査した訳ではないので分からない部分もありますが、日本ではなく米国の弁護士資格をお持ちの方だったようなので(それで外部カウンセルの意見を捻じ曲げるって…)、なおさら一般化しにくいです。職務内容にもよりますが、そもそも日本の有資格者を採用するべきだったのではないかと思わされる事案でもあります。ちなみに、年収1600万円だったようです。事業会社でこの金額、、やはり外資しか勝たん

少し話が脱線しましたが、前述のとおり、法務はパフォーマンスの定量的な評価も難しく、人員削減・交代の要請が高いポジションでもないので、「外資ってすぐにクビになるんでしょ」と心配するほど解雇リスクが高い訳ではないと思います。

なお、外資系企業では上司(レポーティングライン)が全てですが、上司が変わってしまったりすると難しい場面に直面することもあるかも知れません。私の知り合いで、外資系金融のインハウスに転職したけれども、採用してくれた上司が退職し、(コロナ禍での意思疎通の困難さもあり)次の上司からはあんまり仕事が降られずそのまま解雇(双方話し合いのうえ)になったというケースがありました。

拠点縮小等のリスクは避けられない

簡単に解雇されることは無いと言ったものの、不景気で拠点が縮小したり、コストカットの強い必要性が生じた場合等は比較的ドライで、あっさりクビになってしまうと思います。それでもインハウスは相対的に安定したポジションであって、不景気になったからといって、会社のインハウス弁護士を大々的にクビにする(法務・コンプライアンスを疎かにする)とはなりにくいでしょうし、その場合会社としてもかなりヤバい状況のように思います。まあ、金融やアセマネなどにおけるトランザクション系のローヤーは割とバッサリいかれる気はしますが。

ダラダラと述べましたが、平均的に高い給与相場や有資格者に対する理解や待遇、外資系特有の働きやすさ(向き不向きはあります)などに照らせば、決して不合理に解雇リスクが高いという訳ではないと思います。ということで、「外資系インハウスは簡単にクビにならない!」ということを述べましたが、この記事がフラグにならないことを祈ります。

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