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弁護士と英語

外資インハウスに英語はどれだけ必要か?-意外と低い使用頻度

弁護士と英語

更新をサボるのも恒例となってしまいました。逆に、これだけ放置してまた再開しようという気になれる点をポジティブに捉えてまた頑張っていきたいと思います(次の更新も2ヶ月後くらいかな…)

どうやら、3か月くらい前に、四大での英語の必要性に関する記事を書いたようなので、今回は現在の業務と英語の関係についてお話します。

オフィスでのコミュニケーション – 実は大半が日本人

外資系企業なので、「やあ、トーマス、調子はどうだい」「昨日、俺のワイフが」みたいな光景がオフィスで展開されていると思うかもしれませんが、弊社の日本オフィスには外人は数えるほどしかいません。そのため、オフィス内でコミュニケーションに英語を使用する機会は他の外資系企業に比べると少ないと思います。

とはいえ、全体的に業務で英語を使う機会が少ない訳ではなく、大半の人は香港・シンガポール等のアジア本部に上司がいて日常的にコミュニケーションを取っており、その過程で英語を使います。

めちゃくちゃ聞き取りづらいネイティブ上司 

私の場合、上司との主な連絡手段はメールです。最近は徐々にTeamsの活用も進んでいますが、前の会社でSlackの便利さを知ってしまった身としては早々にチャットツールに移行して欲しいです。。

電話でのやりとりは、平均すると週2回(必要に応じてそれ以上)、30分~2時間くらいのコールがある感じです。内容は、案件状況の確認、重要問題の議論、契約書のレビュー、雑談等です。もちろん、他にも用事があればWhatsApp等を使って適当に電話をかけます。

上司は英語ネイティブかつ早口で、最初のころは何言ってるか分からなくて雰囲気だけで内容を察していました。それは冗談ですが、上司は大らかな性格で、英語は聞きづらくても色々聞きづらい訳では無いので、電話でのコミュニケーションに困ることはありません。

これに加えて、数カ月に一回アジア本部に行ったり、上司が観光がてら(?)日本に来たりということもありますが、コロナ以降実施できていません。渡航制限が解除されたら実施しようと言われており、対面での交流が仕事上の人間関係を円滑にすると思っているタイプです。この会社に入るまで外人に飲み二ケーションが通じるとは思っていませんでした。

文書は常に英語が必須 – いびつな日本語訳を押し通すのが仕事

英米法の契約書をヘンテコな日本語に直す日々

日本はアジア本部が管轄しているので、契約書は、相手方との交渉のために日本語版を作成することはあっても全て英語版が必須となります。私の関与するプロジェクトでは英語版と日本語版の両方を作るケースが多いですが、この両言語で契約を進める作業が結構大変です。

本場の英文契約がベース

まず、日本語版を作る場合でも、ガチガチの英文契約である当社のグローバルフォーマットをベースにしなければなりません。通常の日本語の契約とは全体的に構成や表現も違いますし、英米法の概念も混ざっており、日本人からしたら違和感アリアリです。そのため、相手方当社ドラフトを最初に見た時はほぼ間違いなく困惑するのですが、私にはどうしようもなく、困惑する顔を見て楽しむことしかできません。

英語と日本語の板挟み – 翻訳は必ずしも原文に「対応」しない

次に大変なのが、相手方のコメントは日本語でなされる点です。私限りで諾否判断してしまっていい部分もあり、案件を重ねるにつれその幅も増えていますが、それでも、管轄はアジア本部であり、上司と議論しなければならない点はあるので、相手方のコメントの一部又は大半を翻訳又は要約してあげないといけません。

契約書の翻訳をしたことある人ならば分かると思いますが、単純に、日本語と同等の分量をタイプする必要があるので結構な力仕事です。ワークロード的に厳しい場合は外部リソースを活用することもありますが、自分の社内弁護士としての存在意義にも関わってくるので、そこはバランスを取るように努めています

また、英文契約がベースのため、当社ドラフトの日本語版は、不可避的に「翻訳としては正しいが変な日本語」になってしまいます。例えばですが、”subject to Article 5″は「第5条に服する」とか「第5条を条件として」といった訳が比較的単語に忠実ですが、日本人としては「但し、第5条が優先するものとする」みたいな感じで書き換えたくなります。でも、英語版を”However, Article 5 shall prevail”とは書き換えたくないし、書き換えると「なんで?」って私が上司からド詰めされるのです。

この例の場合なら、意訳ということで日本語版だけ相手のコメント通りに修正することも可能ですが、似たような感じで、「そのまま翻訳すると変な日本語になるが、日本語を自然な形に修正するとその英訳が不自然な英語になる」というケースが頻発します。よくある”For the avoidance of doubt”も、「疑義を避けるために付言すると」が決まった日本語訳ですが、「付言すると」なんて英語のどこにも書いてないですよね。ここに”mention”とか”note”とか付け加えると変なことになる訳で、こんな風に、形の合ってないパズルを強引にハメ込む作業が生じます。これは、英文契約のお作法や英米法と日本法の違い、日本企業の勘所を多少は知らないと難しい作業になります。

なお、相手方がしっかりした弁護士を付けて、英語でコメントしてもらって最後に参照用に(又は正本として)日本語版も準備するという形なら案件スピード上がりますが、最終的に日本語を必要とするような企業は、検討・交渉の過程でも日本語版でないと困るというのが実情と思います。

契約交渉会議 – 日本の案件ではあまり英語使わない

上記のとおり、英語が難しい日本企業の場合には日本語版で交渉するので、日本の案件で、英語で契約交渉の会議をすることは少ないです。当社のビジネス担当がアジア本部の外国人というケースもありますが、その場合は通訳を入れます。(主に翻訳・現地法に関して使っている)外部弁護士が通訳するケースもありますが、流石に本職の通訳ほど完全にはできませんし、リーガルフィーがヤバいことになるので、相手方も多少は英語が分かっている場合など限定的な場面に限られます。なお、日本の案件であっても、相手方も外資系の場合は、関係者がほぼ外人で英語で会議ということもあります。日本以外のアジアの案件をやるときは100%英語です。

まとめ – 日本語の重要性が占める割合が大きいのは日本弁護士の利点

以上が、私の現在の業務における英語の大まかな使用状況です。四六時中英語を使っている訳ではありませんが、使用する場面・重要性を踏まえると、日本語と英語の比率は1:1(どちらも同じように重要かつ所与のもの)というのが正直な感覚です。英語ネイティブは「言語で仕事する」ということは難しいのに、母国語を話せるということがこんなに仕事に役立つなんて、ある意味恵まれているなと思います。

最近はサボりまくりなのですが、機会があれば、英語の研鑽として業務内外で何をしているか(してきたか)も記事にしようかと思います。

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