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外資インハウスのお仕事

企業法務

巷ではもうすぐ司法試験ですね。試験会場における感染対策について、「窓がない」とか「密室で長時間」とか、色々な声も聞こえますが、別に窓があってもこの真夏に開けるとは思えないですし(換気装置のレベルは気になりますが。)、東京の満員電車を思えば、不要な会話を慎めば、感染リスクは必ずしも大きくないのかも知れません。

心配はあるものの、法曹が真に社会に必要な職業であれば、その選抜試験はいつかやるしかなく、いま受験生にできることは、体調をなるべく万全にして試験に臨むことだけだと思うので、健康に気を付けて頑張って欲しいものです(なんなら、試験後はみんな二週間自主隔離すればいいんじゃないですか)。

さて、ようやく現職の外資系企業での企業法務のお仕事の話に入っていきます。ということで、現職における私の仕事内容と、会社のカルチャーについて書いていきます。

ジョブ型雇用 – 明確な職務範囲(Job Description)

現在の会社へ入社するに至った転職活動のエントリーでも触れたのですが、私は基本的には新規案件の契約交渉に関する業務をやっています。株主総会、取締役会等を含むコーポレート業務は自分の所管でなく、コーポレート部門が別途外部事務所等に依頼しながらやっています。また、人事、IP、訴訟、個人情報(データ)などの専門分野については、本国やアジア本部などに専門の部署があったりします。前職に比べると、危機管理など会社の重要意思決定や法務全般から離れてしまったのはちょっと物足りない点ですね。

このように、自分の役割がかなり限定されているのは日本で最近話題の「ジョブ型雇用」ってやつですね。外資らしいといえばそうなのかも知れませんが、普通の外資のインハウスがどうなのかはよく知りません。日本のことなら何でもという会社もあるかも知れません。

ただ、それでも日本の弁護士ということで、コーポレート部門やリーガルの別部門から協力依頼が来ることはありますし、日本の別部門から相談が来ることもよくあります。後者は、私の役割をよく知らずに「そこに日本人の弁護士がいるから」という感覚でやってくることが多いのですが、権限分掌・責任範囲が不明確になってしまうので、自分で対応してしまっていいのか困ることがままあります。

(我々のステレオタイプで出てくる)アメリカ人みたいに「It’s none of my business」とか言ってあしらうこともできますが(実際そうすることもあります。)、オフィス内で「日本の弁護士のくせに使えねえ」とあまり思われるのも望ましくないし、可能な範囲で自分というリソースが活用されるべきだとも思っているので、時には担当者をCcに入れつつ自分で捌いたり、時には「〇〇に聞いてくれ」と突き放したりと、ちょっと気を遣います。

契約交渉 – インハウスの役割・権限

主に新規案件の契約交渉をしていると言いましたが、多くは日本の案件です。日本の案件ということで日本語版の契約書を用いるケースであっても、常に英語版が一緒に存在し、内部の議論・決裁は英語版で進めていきます。

多くの日本企業と異なるのは、交渉の場にもインハウスがしゃしゃり出てくることでしょうか。日本企業の場合、どちらかというとリーガル面については外部カウンセルを同席させることが多いと思いますが、当社の場合、外部カウンセルは現地法に関して部分的にアドバイスを求めるに過ぎず、外部カウンセルなしでインハウスが交渉の場に同席し、かなりの発言権も持ちます。インハウスの増加に伴い、日本企業でも交渉に社内弁護士が出てくるというケースは増えているかとは思いますが、数十億・数百億(あるいはそれ以上)のディールで、外部カウンセルを使わずインハウスだけで契約交渉を進めている日本企業は少ないのではないでしょうか。現在は、日本企業では弁護士になってすぐインハウスになっている人が多いというのも一因と思いますが、今後、大手法律事務所のシニアアソシエイトレベルがインハウスに移るケースが増えるにあたって徐々に変わってくるかも知れません。

交渉に際して、相手方の企業は外部カウンセルを同席させてくるケースが多いわけですが、そこはもう相手方企業と付き合いの長い老舗法律事務所のボスだったり、大手法律事務所のパートナーだったりするわけなので、そういう弁護士と渡り合うレベル・覚悟が必要となるわけです。

なお、他のアジアの案件も一定数やっていますが、こちらは当然ながらすべて英語です(一部、相手方の要請か現地法の要請かで現地語に訳しているケースもあるかも知れませんが。)。恥ずかしながら、英語の会議でガチ契約交渉をするには、まだまだ経験不足なところもあるなと痛感しています(それだけに、いい経験にもなっていますが)。英語については、このブログの一テーマとして継続的に扱っていこうかと思います。

外資のカルチャー

一口に外資といっても、企業ごとにカルチャーが違うの当然ですし、米国系の企業もあれば他の国にルーツのある企業もあるし、本国と直接やりとりをするのがメインの企業もあれば、アジア本部を設けている企業もあります。また、日本での事業の規模感や長さ、ローカライズの程度によっても大きく環境が異なるかと思います。そんな中、今私が所属している会社の概要をざっくり言うと、

・日本での事業は数十年単位でそれなりに長い
・アジア全域で事業を展開する中、日本の事業規模はアジアの中で上位
・オフィスの人数的には100人程度(ワンフロアで収まるくらい)
・米国系のグローバル企業で、日本はアジア本部が統括

背景となる会社概要はこんな感じですが、日本での事業を急拡大中みたいな会社や、日本のビジネスがかなり大きく相当日本に溶け込んでいる会社ではまた話が変わってくるかと思います。

そんな中、自分が自社に抱いている「外資的」な印象は以下のようなものです。

人間関係はそれなりにサバサバ

部署内での交流は、飲み会のような日本的な付き合いも含めてそれなりにあるのですが、部署間をまたぐ交流というのは、今までいた組織に比べると(規模感の割に)限定的かなと感じています。公私の区別がはっきりしているというか、(年齢層も高いので)みんなそれぞれ自立しているというか。Officeでの軽い軽食パーティみたいな、外資っぽいイベントはちょくちょくありますし、決して仲が悪いわけではないんですけどね。

組織の新陳代謝は遅い

外資というとすぐクビになるというイメージですが、(事業もボチボチうまくいっていたからか)特に「You’re Fired」みたいなイメージは当社にありません。ただ、必要なポジションが生まれるか、既存のポジションが空かないと新しく人を取らないし、上司とうまくいってさえいれば、そうそうクビにならないようなイメージがあります。

上司が変わるということもこれまた少ないです。出世も上のポジションが空かない限りなかなか難しいので、それで部下が出ていくというケースはままあるかと思いますが、上司が辞めるイメージがあまりありません。その結果、10-20年以上働いている上司(ローカルトップないし準トップ層)がいて、その下が数年目(又はそれ未満)みたいな、人口ピラミッドは完無視な形になりがちなのも、ローカルオフィスの特徴かも知れません。

上司との関係は大事

チームに何人も人がいる訳ではなく、上司と直接仕事をする時間が長いです。同僚と上司の愚痴を言いながら過ごしてれば生きていけるという次元ではなく、日本企業と違って配置転換もなかなか期待できないので、上司のあたりハズレはデカいと思います。幸い、社内でまだ変な人を見たことはないのですが、日本企業とはまた違った面で上司付き合いは大事であり、かつ大変かも知れません。

意思決定は早い?

「外資系企業は意思決定が早い、日本は稟議だらけで意思決定が遅い」みたいなイメージがあるかと思います。実際にそう感じる場面もあり、日本企業に比べると、権限分配が広く行われており、「大したことでない事案に時間をかける」ことは少ないという印象を受けます。担当者限りで決めてしまえることも多く、上位者の決裁も、スタンプラリーのごとく何段階にもわたって行われることは少ないです(ただ、大企業ではあるので、特殊なケースではいくつもの会議体をパスしなければならないこともあります)。

一方で、会計・税務・労務等、各専門部署の担当事項に関する権限・影響力も大きいので、部署をまたいだ話になると、全然話がかみ合わなかったり、担当部署が忙し過ぎたりで、普通に時間がかかってしまうことも珍しくないイメージです。

向いてる人、向いてない人

こんな感じなので、いつも同僚とつるんでワイワイしながら、各所調整しながらうまくやるのを好む人よりは、上司と1 vs 1で親しき仲間がおらずとも平気でやっていける、ある程度技術的にも人間的にも独立した人(かつそういう環境を好む人)が向いてるように思います。まあ、(ポジションのJob Descriptionにもよりますが)日本企業のインハウスからやってくるよりは、法律事務所からやってくる方がしっくりくるケースが多いかも知れません。

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